アランの幸福論(文庫本)比較


幸福論 (集英社文庫)

幸福論 (集英社文庫)


幸福論 (岩波文庫)

幸福論 (岩波文庫)


結論から言うと、個人的には、岩波文庫版の方が読みやすい。というか、岩波文庫版の方が集英社文庫版よりも発行が新しいからなのかもしれないけど・・・。


集英社文庫版は、巻末を見ると、旺文社で出版していたものを文庫化したものらしい。文字が大きいのはいいが、行間が狭く、原文を読んだことがない(というか、読めない)のでわからないが、岩波版で感じられた独特のリズム感ともいえる読みやすさが感じられなかった。ただし、それぞれの項毎に用語の注が付いているので、わからない用語などの意味が調べられる点は便利かな。あとは、最初の2ページぐらいに写真が載っているというのが特徴かも。


岩波文庫版は、個人的には、岩波文庫というと、硬い文体で、用語の注が充実しているというイメージがあるのだが、この本に関しては、このイメージは崩されたと言ってもいいと思う。


まず、特徴としては、原文の文体?を重視したのか、独特のリズム感ともいえる読みやすさが感じられ、集英社版に比べ、文字は小さいが、その分、行間が適度に空いていて、非常に読みやすくなっている。残念なのは、時たま、原文をそのまま日本語に直訳したのではないかという箇所がある点だろうか。これについては、英文を直訳した日本語のような感じといえば、わかりやすいと思う。あとは、注がないという点かな。


フランスの小説家アンドレ・モーロワはPLEIADE版『プロポ』第一巻の序章の文頭で、この本のことを「これは、私の判断では、世界中でもっとも美しい本の一つである。」と書いているそうだが、個人的には、最初に集英社版を読んだ時には、この言葉の意味がわからなかったのだが、岩波版を読むと、この言葉の意味がわかるような気がした。


それは、哲学的な要素の文章にも関わらず、詩のような流れる文体によりスムーズに心に響くという感じかな。


あと、書店などで実物を手に取り、それぞれの項目のタイトルを比べてみると面白いかも。